潜入工作

作戦決行は夜中。今回の任務はクライアントを無事に某施設内部に送り届け、仲間が手配した車に乗せること。それまでの道の確保と、クライアントの保護だ。
目標施設からは一度脱出した経験があり、内部事情はある程度分かっている。侵入路さえ間違えなければ、施設の人間には見つからずに潜入できる場所だ。外部からの利用者が多数存在するため、彼らの一人を装うのは容易だが、不審がられる事の無いよう、潜入する姿は見られてはならない。
 
作戦予定時間が迫り、仲間の車から合流予定時間が告げられる。さあ、出発だ。しかし、クライアントはまだブツの準備をしている。金属製の筒状容器に納められたソレは、使い方次第では家一軒楽々…というシロモノだ。
何とか準備を完了し、クライアントと共に施設へ向かう。途中、予想外に早く仲間が施設に到着したとの連絡が入る。なんということだ。長時間いては怪しまれてしまう。早く合流せねば。
 
急ぎ施設へ向かう。
 
施設から少々離れた場所に車を停め、徒歩で警備の手薄な裏手へ。
予想通り、裏手は警備の目が届いていない。裏口からの潜入を試みるも、しっかりと施錠されている。ここからの潜入は無理だ。だがこれも想定の範囲内
その時だ。クライアントが突然信じられない行動に出た。裏口のフェンスを乗り越えたのだ。
まずい! それはあまりにも目立ちすぎる。それでは即刻通報ものだ!
 
しかし、こちらの心配をよそに、クライアントは無事のようだ。
罠か?
罠かもしれない。だが、こうなった以上、こちらも覚悟を決めて飛び込むほかあるまい。
意を決して飛び込むと、施設内部は驚くほど静かで周りには誰もいない。理由はわからぬが、とにかくチャンス。
少し進む。すると、見慣れたシルエットが光に浮かんでいるではないか。仲間だ。
挨拶もそこそこに、クライアントを引き渡し、今回の任務は完了。あとは自分が脱出するのみだ。
人目を盗んで裏手に回り、ちょうど一人分の幅だけ低くなった包囲網を越えて行く。特に苦もなく脱出成功。
アジトに戻り、深い眠りについた。