そこに山があるからだ
登る、登る、登る。
太陽はとうにシルクロードへ旅立ち、空は一面雲ばかり。
街の灯りは雲を照らし、薄明るい雲が大地を包む。
登る、登る、登る。
四半世紀前に門をくぐった我が学舎。
その裏山をただ登る。
登る、登る、登る。
給水塔まで126段。
登りきったら踵を返し、麓に向かってただ降りる。
下る、下る、下る。
運動不足な毎日にせめてもの抵抗。
息は上がり、顎からは汗が垂れる。
下る、下る、下る。
下りきったら回れ右。
実際より数倍高く思える給水塔を見上げ。
登る、登る、登る。
理想の自分よ、不器用な進み方しかできないが、少しずつでもそちらに近づけていますか?
登る、登る、登る。
その頂点で振り返る。
木々の隙間からこぼれる色とりどりの輝き。
眼前に広がる濃尾平野。
ちょうど正面。
そう、あの大きなビルの向こう側。
あなたの家がそこにある。
ああ、僕は不器用な進み方しかできないが、少しずつでもそちらに近づけていますか?
ちょうど正面から吹く風が心地いい。