2.1部9話ボツ原稿をあげてみるテスト
「さて、これで私の役割は終了。あとは……じゃまなあなたを始末するだけです。」
振り返る多田の前には、怒りに燃えるピカリがいた。
「任務に失敗し、仲間も死に、自分も死ぬ。実に無様ですね。」
ピカリの脳裏にイサミの顔が浮かんだ。
今日出会ったばかりだというのに、口げんかばかりしていたのに、なぜだか胸が痛くなった。
恋なんなじゃない。
「能力」を使い果たしても立ち向かった「仲間」を侮辱されたのだ。傷ついて、怒って当然だ。
「無様?それが何だって言うのよ!もがいて、あがいて!そうやってみんな生きていく!成長する!」
ルミィの舌が伸びる!
「……クッ!?速いッ!?」
それは、キーマンで強化された多田の能力でも捕らえられないほどの速度。
「結果だけを求めるあんたにわかるはずなどない!前に進む意思こそが人の本質だと!」
スピード型からパワー型に変化し、ギリギリと多田を締め付ける。
「うぐぐぐぐぐぐぐ……。」
「無駄よ!もう逃しはしない!」
すさまじい力で締め付けられながらも、多田は指先一本ほど動かせる空間を作り、ルミィの舌に「鍵」を突き立てる。
「キー……マン……解放……しろ……!」
「貴様……なにをヒハッ!……ハレ?ホロハがフマくハベレない……。」
ろれつの回らなくなるピカリ。
「ふぅ、母体で人の指がどうやってできるか……あなた知ってますか?」
「…………」
舌に力が入らない。
「まずはグローブのような手ができるんですよ。それから、指の「また」の部分の細胞が「死んで」行くことで指が残る……アポトーシス(細胞自然死)ってやつです。」
「…………」
それでも全力で多田を縛り上げる。こいつは逃がすわけにはいかない。
「解放しました。あなたの舌の「アポトーシス」の才能を、ね。」
「…………!!!!」
痛みは感じなかった。
マヒした舌先が、なくなっていく「感触」。
それだけはリアルだった。
舌先からだんだんとルミィが消えていく……。
「さて、さよならですね。念のために顔を変えて、あなたの息の根をとめておきましょう。……ほかって置いても死にますが。」
多田は自らの顔に「鍵」を挿す。
顔面がボコボコと波うち、まるで別人の顔に変わっていく。
ルミィは……完全に消滅していた。
「あなたも消える前に、なにか言い残すことはありますか?」
これ以上ないほどの屈辱的な笑みで多田がたずねる。
「……………」
「ん〜、なにを言っているのかわかりませんねぇ〜〜。」
おどけて聞き耳をたて、ピカリの口元へ近寄る。
(……な……め……る……な……)
ピカリの口はそう動いた。
瞬間!多田の体が宙に舞う!
それは、消えてしまったはずのルミィ。
魂の一撃で多田の意識は吹っ飛んだ。
(おまえに消される前に……舌を噛み切ったんだ……)
勝負には勝ったが、「錆びない鉄」は奪われてしまった。
(「こう考えるんだ。まだ左手が残っているじゃないか、と。まだ攻撃はいくらでもできる」だっけ?ありがとよ…… )
一陣の風が吹き、ピカリの頬に流れるモノを吹き飛ばした。